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2005年7月 3日 (日)

旅の記憶ⅩⅡ チェンマイ行深夜急行

バンコクのファランポーン駅で切符を買った。
「チェンマイまで、寝台」
「上?下?」
駅員は訊いてくる。
「上」
「500バーツ」
もう夕刻になっていたと思う。
私は車両に乗り込み、切符に書かれたシート番号を探した。
ここだな。
でも、先客がいる。
4人がけのボックス席になっているので、同じボックスなのかな。
と思っていた。
隣に座ろうと思い寄っていくと、先客のおばさんが何やら言っている。
席を間違えたのかな。チェックしたけど間違えてない。
そのおばさんは言った。

「まだ客がいないから、そっち(反対側)へ座ってれば」
「混んできたら代わればいいよ」
たしかに混んではいない。
「ちぇっ。ずうずうしいなぁ」

乗客もあまりいないまま、列車は動きだした。
さっきのおばさんはどこへ行ったか、姿が見えない。
あれは乗客だったの?
私は自分の席に戻った。

列車はスピードを速める。
夕暮れの中をがたごとと進んでいく。
扇風機がかたかたと音を立てて回っている。
そのうち、車掌が回ってきた。
食事の注文をとってるようだ。
そうかぁ。食事が車内でてきるんだ。
ピールとその他二品たのんだ。
車掌がテーブルの準備をし始めた。
座っている4人がけのボックスに上手に
テーブルをこしらえる。
へ~え。こんなことできるんだ。

車内の料理はあまり良くなかったと思う。
でも、いい感じで列車は進んでいく。
暖かい風が窓から入り、夕暮れの移り行く風景が、なんともいえない
旅情を感じさせる。

だいぶ暗くなってくると、車掌がベッドの準備をしてくれる。
私は疲れた体で横になると、すぐに眠ってしまった。
夜は何度か列車の揺れに目を覚ましたが、そのうち辺りは明るくなり、
朝を迎えた。

チェンマイ駅に降りると、水道の蛇口があったのでそこで顔を洗い、
タオルで拭いていた。
兄ちゃんが寄ってきて、また何やら言っている。

「今日のホテルは?」
「決めてないよ」
「ここどう。○○ゲストハウス」

凄く安いけど、清潔そうな宿の写真を見せてくれる。

「いいよ。自分で探すから...」
「他の客に言ったら?」

「・・・」

「他いない...」

周りをみると、客は自分ひとりのようだ。
その兄ちゃんとは目を合わせて別れた。
彼が、寂しそうな顔をしていたのを憶えている。

私は、チェンマイ駅から、ぼつぼつとあてもなく歩き始めた。

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